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「あ」
突然、何かに気がついたような顔つきで、彼氏の椎名くんが呟いた。
待ち合わせの神社の鳥居の前で待っていた私に、彼は相変わらずのローテンションで近づく。
「久しぶり」
「あ、うん」
ヤバい。落ち着け。
一人だけテンション爆上がりしそうになって、私はこっそり深呼吸した。
一月の澄んだ空気を取り込んだ私の肺が一瞬凍える。
新年が明けて五日目の朝だ。
冬休みに入ってからは受験勉強の焦りで全然遊べなかったけど、そろそろ椎名くんに会いたくなってきたので、思い切って電話で彼を呼び出した。
受験生だし、神社に詣でに行くというのは悪くない口実だと思って。
ちなみに私は元日に家族と初詣に行っているので、今日は2nd詣となる。
二度目の詣が2nd詣という呼び方でいいのか? という疑問は一年前にも感じたけど、結局一年を通じて答えは分からないままだった。多分一年後も同じことを言ってる可能性大。
「なんか楽しそうだな、藤川」
「そう? 別に普通だよ」
逆に、久しぶりに会えたんだから椎名くんも楽しそうにしろよと思う。
すると彼は思い出したように言った。
「やべー。俺、今年に入って五日目なのに、まだ一度も笑ってないわ」
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