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「なんかそれ、一年前にも聞いたような気がする」
「やっぱそう? 俺も一年前に同じこと言ったような気がする」
「受験勉強のしすぎなんじゃない?」
「いや、最近はもう諦めの境地に入ってて、ダラダラしてる。孤高のグルメを一気見したりしてる」
「それ、去年も言ってたよ。ヤバいね」
椎名くん、相変わらずすぎるだろ。
思わず笑った私を見て、椎名くんはため息をつく。
「藤川って笑いのハードルが低そうでいいよな。俺はもう何が起きても笑えないもん。目の前を人面犬が横切っても笑えないね」
「それは笑うやつじゃないじゃん。怖がるやつじゃん」
「その人面犬の顔がうちの親父だとしても笑えないね」
「それはもう泣くやつじゃん。お父さん、犬になっちゃったんだよ? 笑ってる場合じゃないよ」
椎名くんはいつもどこか着眼点がズレている。
すると、椎名くんが私の目をじっと見つめながら言った。
「なんか面白いことやってくんない? 藤川」
五日も笑ってない男を笑らせろだと?
ハードル高えわ。
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