椎名くんは笑わない 2nd

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「返したいのはやまやまだが、今日はお賽銭で使う分しか持ってきてないんだ」 「そっか……確かに、たかが30円と言えど返してもらえなかったらモヤモヤするかもね」 「それだけじゃないんだ。大掃除で要らないゲームソフトを売却することになった時、あいつに借りてたソフトまでうっかり中古屋に売ってしまったことをこのタイミングで思い出して」 「あー気まずい気まずい」 「しかも半年前に借りたやつ」 「半年? 沢田くんもよく何も言わなかったね」 「あいつ、無口だからなー」  そういう問題じゃないだろ。  沢田くん、いい人すぎる。 「買い戻してあげなよ。可哀想に」 「売った時は100円だったのに、いざ買うとなったら1500円の値がついてても?」 「あーそれはちょっとやだね」 「だろ? アコギな商売しやがって。そういうわけなんだ、ごめん沢田。お前とはもう永遠に会えないかもしれない」  椎名くんは心の中の沢田くんに話しかけて重いため息をつく。  ……いや、買い戻せよ。  1500円で友情を諦めるな、椎名くん!
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