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「もう、1500円くらい私が出してあげるから買って返そうよ。それなら沢田くんにも会えて、椎名くんも笑えるんじゃないの?」
「えっ? それだと俺が藤川に1500円借金した気まずさで藤川に会えなくなるけど」
「そうなる前にすぐ返しに来ればいいでしょ!」
私は肩にかけていたミニショルダーバッグからお財布を出そうとした。
すると、その手を椎名くんが掴んだ。
びっくりして見上げれば、男前の顔をした椎名くんがいた。
「いや……藤川にそこまでさせるわけにはいかない。藤川に会いたいから会いに来たのに、また気まずくて会えなくなるのは嫌だし」
「椎名くん……」
椎名くんも私に会いたいと思ってたんだ。
胸の内側がじんわりとあったかくなる。
「ソフトは俺が買ってくるよ。お年玉でもらった一万円札があるし」
「あんのかい」
「うん。ないのは小銭だけ」
「腹たつな。だったら早く買いに行きなよ」
「うん」
椎名くんはダッシュで神社の境内を出ようとした。
けど、途中で足を止めて私を振り返り、何故か戻ってきた。
「どうしたの椎名くん。うおっ?」
椎名くんは突然私を正面から抱きしめた。
「やっぱ、沢田に会うのはまた今度にする。今は藤川と離れたくないから」
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