椎名くんは笑わない 2nd

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 私たちは手を繋いで賽銭箱の前に行き、横に並んで手を合わせた。  去年はまだ曖昧だった願い事。  今年はもう少しだけ、祈りを強くしよう。  来年も、その先も、こうして隣にいられたらいいね。 「さて、中古ゲーム屋行ってそのあと沢田んち行くか!」 「そうしよう。ところで、沢田くんから何のゲーム借りてたの?」 「ドラクエ一作目」 「マジで⁉︎ ファミコンじゃん! 逆にレア」 「うん。あ、そういえば沢田がメモってた復活の呪文も無くしてたんだわ。やっベー。やっぱあいつには永遠に会えないな」  どんだけレベル上げしてたのか知らないけど、それは痛恨の一撃。   「あーあ。沢田くん可哀想」 「まあ、それがあいつの運命だから」 「最悪だな、椎名くん」  開き直る椎名くんと、私はちょっぴり悪い笑みを交わした。  神様。こんな悪い私たちですが、どうかバチが当たりませんように。  真っ赤な鳥居を振り返り、私は元気よく頭を下げた。    
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