ある春の日に空を見上げながらキスをした

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小さな花をたくさんつけた桜並木を歩く。 少し冷たい風が吹き、薄いピンクの花びらがひらひら舞いながら雪のように地面に落ちていく。 優しい陽が空から注いで春の香りが私たちを包み込んでいる。 何年も前から、ずっとこんな日を待ち望んでいた。 私の隣を歩く、夫の胸に抱かれた小さな命は すぅすぅと寝息をたてて眠っている。 「散歩、三人で出来るって幸せだね?」 並んで歩く夫の顔をのぞき込む。 「うん。でも、二人の時も幸せだったよ?」 目を細めて微笑む夫の顔につられて私の口元も緩む。 急にグズグズと動き出した我が子が目を覚ます。 これから2歳、3歳⋯と成長していく姿を見られる喜びに何とも言えない気持ちになる。 高く青い空に我が子を抱き上げて 愛おしいあたなにキスをする 生まれてきてくれてありがとう。 来年も三人で桜を見に行こうね。
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