本当の孤独

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本当の孤独

 「…もう、一人になりたい。別れてほしい」  「…は?どういうこと……」 自分が弱っていたときに、夫に愛されていない事実を突きつけられて、グシャグシャになった心は涙を抑えきれなかった。  「……私のこと愛してないでしょう…?」  「……え」 夫のメモを机に出した。  「…これ、妹さんの薬の名前だよね…」  「…そうだけど…」  「私が今飲んでる薬は分かる?…なぜ…なぜ…私のついでの通院にすら付き添ってくれないの……」  「妹の心配するのは普通だろ?!」  「…そういうことじゃないの…」  「なんで俺が責められなきゃいけねーんだよ!!」  「責めてるんじゃないの。…妹さんには寄り添えてるのに、私には全然寄り添えてないこと分からない…?」  「忙しいのにお前のことまで何で気にしなきゃいけねーんだよ!」  「…じゃあ、なんで妹さんには忙しくても寄り添えるの?妹さんには婚約者もお義父さんお義母さんもいるのに。 …私が入院したってろくに見舞いにも来なかったくせに!!」  「入院の最初のときにあれだけ世話を焼いただろ?!現にもう退院出来てるじゃねーか!」  「世話を焼いたって…入院のときに家族のサインが必要だから、ついでに来ただけじゃないの…」  「なんだよ!!俺だっていろいろやってやったのに、なんでそんなこと言われなきゃいけねーんだ!!」  退院しても自宅での安静が必要で、実際にまだ体はしんどい状況だった。原因も分からず、自分がちゃんと治るのか不安でいっぱいだった。 実家も世間体が第一の親だから数回の見舞いだけだったし、退院した後はまた私がいつ仕事に行けるのかとしか、聞いてこなかった。  私には夫もいて、両親もいるはずなのに…。誰一人私自身のことなど心配などしていないことを突きつけられて、深い孤独に気づいてしまったのだ。 体を壊すまでずっと、自分さえがんばれば、家族という体裁を保てると思っていた。自分の努力がいつも足りないから、みんなに共感してもらえないんだと思っていた。 自分が病気になってがんばれなくなったときに、周りの人間の本性にやっと気づいた。 私の周りはみんな、世間体とか体裁がいつも第一なんだ。 …これならいっそ、一人でいた方がずっとマシだ。周りに誰かがいるのに自分が大変なときに寄り添ってもらえない状況だと、より孤独が深まるだけだ。  夫は私が最後通牒(つうちょう)を突きつけても、私の訴えの本質を分かってくれることはなかった。  「式まで挙げたのに?!恥を晒す気か?」  「何が恥ずかしいの…」  「職場になんて説明すればいいんだ!!」  「職場なんて関係ないじゃない…」  「とにかく俺は離婚なんて認めないからな!!」  「……」 もう反論することにすら疲れてしまって、ただ涙が流れるだけだった。 そこから離婚のことについて本格的に調べ始めることになった。
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