裏切り者は殺される ※

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 涙が頬をつたう。足が震えてしまっている。手も震え、唇も震えている。  この恐怖は、ジョシュアの覚悟に対するものなのかしら?自分がやってしまった過去の罪に対して、私は今、償いを強いられているのもしれない。    大好きだった彼を裏切ったら、3年経って彼は私を殺さなければならない状況だ。 「ひとまずこっちに来い」  ジョシュアは私の腕を乱暴につかんだ。そのまま藪から引きずり出された。そして、彼に引っ張られるように私は庭を歩き始めた。彼は歩きながら絶え間なく辺りを伺っている。   「どこに行くの?」 「黙れ」  私は冷たい声で一蹴されて、黙り込んだ。麻袋に隠れて荷車の荷台に乗っていた時間は、結局無駄だった。こうして政敵につかまったのだから。次の王朝の君主たるその人に捕まったのだから。私が裏切ってしまった初恋の人につかまってしまったのだから、逃げても無駄だったのだ。  ――どうせ殺されるなら、殺される前に一言ジョシュアに伝えよう。私はあなたを応援すると。私がノア皇太子と結婚したのは間違いだったと。呆れるほどみっともない自分に嫌気がさす。私は信じられないほどとんでもない女だわ……そんなのわかっている。でも、それとジョシュアを応援する気持ちは別だわ。  私は子供の頃にジョシュアに案内された秘密の裏扉から、館に連れ込まれた。  ――となると、彼の部屋に行くということね?  私は子供の頃に、やはりこの秘密の裏扉からジョシュアの部屋に案内されたことがある。数年後、私のファーストキスを奪われた部屋だ。私が官能的な初めてを経験した部屋。
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