目撃 ※

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目撃 ※

 一歩踏み出せば、何が起こるのだろう。  私は身じろぎもせずに物陰に隠れている。皇太子とその愛人の動きを見つめている。息をするのも忘れたかのように、私の体は固まって動かない。  前に踏み出そうにも場違いな感じがして息を潜めてそこにいる。どうすれば良いのだろう。  最初は皇太子の体が見えただけだった。今は一糸纏わぬ二人が見える。  愛人リリアは敵の一門の出。身分を隠して皇太子に近づいて、自分に入れ込む皇太子を利用してクーデーターを仕掛けている、と私は思っていた。だからここまで危険を知らせにやってきたのに。それなのに私の体は動かない。  愛人の動きは演技とは思えない。金髪を揺らして艶かしく動き、頬を上気させた皇太子を無心に喜ばせている。  あぁっんっン!いぃっ……あんっ!やぁっ……んっ!  私は何をしに朝早くにここまでやってきたのだろう?危険を早く知らせなければ。私はこの二人の間に飛び込んで、引き離すべきなのかしら?    しかしそれは一瞬のことだった。私が躊躇していた瞬間にそれは起きた。  彼女は皇太子に馬乗りになったまま、皇太子の首を絞めた。最初は嬉しそうな驚きの表情を浮かべた皇太子。けれどもすぐに…。  あぁっ  ぐっっうぅっな……な……にを……する…… 「あんたの父親も今ごろ殺されたわよ」  愛人は、皇太子が息たえる前に、息も絶え絶えの皇太子にそうささやいた。 「親子揃って女好きの腐った豚ね……」
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