おでんの味

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 そして7年後、僕はアシスタントを経て念願の漫画家デビューを果たした。漫画は大人気を博し、某有名漫画家T先生からも高い評価を受けた。そしてその1年後にはアシスタントの女性と結婚し、幸せな生活も手に入れた。これもすべて、あの小料理屋の大将さん達のおかげだ。いつか必ずお礼に行きたいと思っていたが、多忙なためになかなか行く事ができなかった。しかしやっと貴重な休日を取る事ができ、僕はあの懐かしい小料理屋へとやって来た。けど、あの人にはもう会う事ができなかった…。   お店の戸に貼られた張り紙には、大将さんが癌を患い亡くなったため、小料理屋を閉店すると記されていた。  僕はとてもショックを受けた。今迄ずっと大将さんの励ましの言葉を支えに頑張ってきた僕にとって、あの人は心の恩人だったのだから…とても残念でならなかった…。  その夜、僕は一人部屋に籠り仕事をしていた。だが思うように筆が進まない…そりゃそうだ。あんな悲しい知らせを見てしまったのだから…。  夢でもいいから、あの人にまた会いたい…。  
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