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けどそれはサンチョの銃声じゃない。彼の拳銃から放たれた、7発目の弾の音だった。
「ば…ばかな…‼」
右上腕を撃たれたサンチョは地面に両膝をついた。
「て、てめぇ…一体なにもんだぁ…‼」
彼はサンチョの問いに答えた。
「…俺の名はダイゴ。ダイゴ・キッドだ」
「て…てめぇがあのダイゴ・キッドか…噂で聞いてはいたが、てぇした腕だぜ…さぁ殺せ‼」
しかし、ダイゴは拳銃をホルスターに収めた。
「な、なんで殺さねぇんだ!」
ダイゴは首を横に振り、「あんたみたいに非情になれないのさ」と、その場を立ち去ろうとする。けれど手下の一人が拳銃を拾いダイゴを狙った。撃鉄の音に気付いたダイゴは再び銃を抜き、手下の拳銃を弾くと、続けて地面に落ちている手下達の拳銃を弾き飛ばした。サンチョ達は只々呆然とし、その場で固まって動かなかった。
ダイゴはサンチョとの戦いに勝利した…しかし、立ち去ろうとするダイゴを狙うライフルの銃口が…!
「そういえばあなた髪伸びたわね。床屋に寄ったらどう?ダイゴ」
床屋の方を見たダイゴはライフルに気付き、すかさず拳銃を抜いた。床屋の窓ガラスの割れる音が鳴り響く。店の中を覗くと、右肩を撃ち抜かれた床屋の主人が倒れていた。
「どうやら、裏切者はコイツだったようだな…」
「ち、ちくしょー!やりやがったなぁ‼これじゃもう商売が出来ねぇじゃねぇかぁ‼」
対決が終わると、町の住人達が外へと大勢出てきた。そして、町長が感謝の気持ちを述べた。
「いやはや、なんとお礼を申したら良いか。お噂は聞いておりましたが、まさかこれ程とは…町の者を代表して、心から感謝いたしますぞ!」町長は続けて言った。「どうか、この町の保安官になってくれませんかね?」
「ふふっ…悪いけど、俺は根無し草のガンマンの方が性に合ってるんだ…保安官なんてとても無理さ…」
ダイゴは町を去ろうと、愛馬のジャンゴに跨った。
「もうすぐ警備隊がこの町に来るはずだ。これで皆も元の生活に戻れるだろう」
「あ、あの、賞金はどうなさるんです?」
「やっと悪党どもから解放されたんだ。あんたらで自由に使ったら良いさ。それじゃ!行けジャンゴ!ハァ‼」ダイゴは町を後にした。荒野の彼方へと去って行くダイゴを、住人達は手を振って見送った。
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