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彼女は貴族でも教会関係者でもなく、比較的裕福な商人の家の出身であるが、物心ついた頃より父親の書斎に入り浸り、蔵書の難しい本を読み耽るようなたいへん利発な娘であった。
そんな本人のたっての希望により、この時代、唯一女子が学問に触れられる聖職者への道を志したエルミオネは女子修道院へ入るのであるが、それだけで彼女の知的好奇心は飽きたらなかった。
入院後わずか一月で『聖典』(※プロフェシア教の根本経典)を誦じるような彼女の才能に、さすがの修道院長も舌を巻くと、より高度な知識を得られるサント・メイアーの魔法修士課へ入学できるよう、推薦状を書いて送り出してくれたのである。
ただし、男性優位のプロフェシア教会において、正式に魔法修士となれるのは男性修道士だけであり、現状、修道女のそれは許可されていない。
故にエルミオネのような修道女もごく少数学びにくることはあるが、それはあくまで見識を広めるためのものであり、言ってしまえば趣味の域を出ないものだったりするのである。
もっとも、女子修道院としてもこっそり魔導書の使える人材を確保しておきたいという密かな目的や打算もあったりなんかはするのであるが……。
「チェッ、なんだよあいつ、お高く止まっちゃってさ。〝名高きサント・メイアーの名を汚さぬよう、もっと意識を高く持ってくださること?〟だってさ」
そうして狭き門を掻い潜って来た超のつく秀才の背中を見送りながら、まさしく凡人的な台詞を口にするリョンはその口調を真似してみせる……完全に言動が小物だ。
「それだけこのサント・メイアーで学ぶことに誇りを持ってるってことさ。なんといっても王国一の神学校だからね……さ、僕らも早く行こう。入学式前にもいろいろやることあるだろうからね」
「……あ、ちょっと待ってよ!」
一方、アリィは反対に大きな器の片鱗を見せると、エルミオネの態度にイラつくこともなく、不貞腐れるリョンを促して自らも大聖堂の門を潜る……。
こうして神の悪戯にも、偶然、出会うこととなった魔法修士課新入生の三人……彼・彼女らの奇想天外な神学校生活が今、はじまる……。
(El Seminario Del Monje Mago Del ~魔法修士の神学校~)
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