Ⅰ 魔法修士課の新入生

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 まず一番簡単なのは、通常の修道士から魔法修士へ転向する道だ。  これは魔法修士の所属する比較的大きな修道院ならば、その組織内での移動だけですむ。ただし、魔法修士のいない修道院の場合、所属する院への移籍が必要となる。  二つ目は無職の修道士からではなく、司祭や助祭といった聖職者から魔法修士へと鞍替えする道である。  こちらは修道士のケースと異なり、職を辞して修道院へ入らなければならず、あれやこれやと少々手続きが複雑だったりもする。  そして三つ目が、アリィのような世俗階級から、直接、魔法修士を目指すというまったくの新人だ。教会育ちとはいえ現状、修道士でも聖職者でもないため、彼もこのケースに当たる。  こちらの場合もまずは修道院へ入って修道士となることが求められるのだが、それとともに必須となるのが、この神学校の魔法修士課程への入学である。  前出の二つのパターンでも同じであるが、魔法修士になるためには当然、魔導書の知識とそれを使用するに当たってのノウハウを身に付けなくてはならない。  故にその道の師となる者が必要であり、〝魔法修士〟というものが生まれた当初は修道院内で先達の魔法修士が弟子の指導に当たっていた。  しかし、それでは多忙を極める魔法修士の負担が大きく、弊害も出始めたため、現在は神学校内でまず基礎を教え、その後に各所属修道院で研鑽に励むようになっている。  また、修道士、聖職者からの場合は魔導書関連の専門授業を一年間学び、加えて新人は一般的な神学も学ぶため二年間通うこととなる。  まあ、そんなわけでこのメガネな少年アリィも魔法修士課へ入学することとなったのであるが、それに際して選んだのがここ、サント・メイアー・デ・エル・エスカルゴス大聖堂の神学校だったというわけだ。  理由は住んでる教会から近かったということもあるが、歴史はまだ新しくも、現状、この大聖堂こそが国内随一の蔵書と人材を有するまさに智の殿堂だからである。 「まさか、捨て子だった僕がこんな立派な学校へ通えるなんてなあ……神さまとダズーリャ司祭にはほんと感謝だよ……」  巨大にして荘厳な石造りの大聖堂を見上げ、アリィは再び感嘆の溜息をもらす。
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