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ビルのトイレで俺は用を足していた。作業着の男がトイレへ入ってきた。彼は俺の隣の小便器の前へ立った。
作業着の男は俺の方をちらっと見た。もう一度、ちらっと見た。
「よお、久しぶり」 男はいった。
俺は振り向いた。
「おお」俺は思わずうなった。
男は高校時代の親友、山川だった。彼と会うのは、三十年ぶりだった。
「奇遇だなあ。お前、このビルで働いてたんだ」山川はいった。
「いや、たまたま仕事で来たんだよ。お前も?」俺はいった。
「ああ、俺もたまたま仕事で来たんだ」山川はいった。
会話がぴたりと止まった。
星空の下にいるような静寂が訪れた。まるでプラネタリウムの中にいるようだった。天井も床も壁も、満天の星空だった。霧のような星々が闇全体へ散らばり、白い光を放っていた。
山川の方が先に終わった。彼は腰を振ると、ファスナーを上げた。
「じゃあ」山川はいった。
「じゃあ」俺もいった。
山川は手も洗わず、トイレを出て行った。
ビルのトイレへ入ると、スーツの男が用を足していた。 俺は隣の小便器の前へ立った。
俺はスーツの男の方をちらっと見た。もう一度、ちらっと見た。
「よお、久しぶり」 俺はいった。
スーツの男は振り向いた。
「おお」スーツの男は思わずうなった。
男は高校時代の親友、谷村だった。彼と会うのは、三十年ぶりだった。
「奇遇だなあ。お前、このビルで働いてたんだ」俺はいった。
「いや、たまたま仕事で来たんだよ。お前も?」谷村はいった。
「ああ、俺もたまたま仕事で来たんだ」俺はいった。
会話がぴたりと止まった。
星空の下にいるような静寂が訪れた。まるでプラネタリウムの中にいるようだった。天井も床も壁も、満天の星空だった。霧のような星々が闇全体へ散らばり、白い光を放っていた。
俺の方が先に終わった。俺は腰を振ると、ファスナーを上げた。
「じゃあ」俺はいった。
「じゃあ」谷村もいった。
俺は手も洗わず、トイレを出て行った。
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