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「じゃあ、食事が終わったらーーー…僕と陽介さんは施設を一通り見学するから。
その間に平君は佐崎さんからデザインの話聞いておいて」
俺は驚いて東堂さんを見た。
待って下さい、と言いたいが、それは声にはならない。
「本当は全員で一度施設を見て周りたいなと思ったんだけど…時間的に厳しそうで…
平君、ウチの佐崎をお願いね。
ーーーこんな顔してるけどたまに厳しいこと言うから、気をつけて」
駒場さんは時計を見つつ理由を説明し、憂を揶揄った。俺はなんとか苦笑いをするも、気まずさからまばたきすら不自然になりそうになる。
レストランでの食事を終えると、東堂さんと駒場さんは葡萄畑に行ってから熟成庫へと向かう為、長靴に履き替えてレストランを後にした。
残された俺と憂は葡萄畑と熟成庫の見学を終えた2人が最終的に戻って来る、ゲストハウスの2階にある、研究室横のフリースペースでコラボグッズのデザインについて話し合う事になった。
ゲストハウスの受付には相変わらずヤマさんが座っており、憂と2階の研究室へと向かう俺に揶揄うような視線を向けてくる。
うざい!!!
放っておいてくれ!!!
変なおじさんめ!!!!
ヤマさんに心の中で呟いてから俺は2階に上がり、研究室の隣にある小さな部屋に憂を案内する。
テーブルと椅子だけが並び、小綺麗な取調室のようなこの部屋。
事務室だと別のスタッフが来てしまい、ゆっくり話せないしーーー公表する前のデザインの情報が漏れると良くないと言われこの部屋を指示されたけどーーー
この狭い部屋で憂と向かい合って話をするなんて、今にも息が詰まって窒息してしまいそうだった。
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