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「私も取り入れたくなりました。 アルマジローーーちょっとデザインに組んでみますね。 ーーー…お店のロゴにアルマジロを入れても良いかもしれません」 憂は資料の端っこに小さくアルマジロらしきものを描きながら笑う。 ーーー…アルマジロってそんなんだったっけ… 憂が描いているそれは、亀の甲羅を背負ったネズミのようになっている。 「なんかーーー違いますね…!」 俺の視線に気付いたのか憂は照れくさそうに笑って手元で自ら描いたアルマジロを隠した。 「いやーー…ちゃんとアルマジロっぽいです」 俺も少しだけ笑顔を浮かべて告げる。 アルマジロっぽい、と言えば、ぽい。 俺は改めて考える。 目の前の憂がーーー俺を知っているのに知らないふりをしている様にはどうしても思えない。 今目の前で話したり笑ったりしている憂は、俺が大学一年生の頃、初めて会った憂に限りなく近いものがあった。 落ち着いた大人びた印象でーーー服もトレンドのものというよりは、ベーシックでシンプルなものを好んで着ていた憂。 俺と付き合っていた頃の華やかな憂というよりーーー今の憂の印象は付き合った当初の憂に近く、年齢を重ねたとは感じるものの、雰囲気はほとんど変わらない。 見れば見るほど憂が実は今俺を知っていてーーー俺と初対面のフリをして演技でこうやって話したり笑ったりしている様には思えない。 ペンの握り方も、小さい手も、付き合っていた頃にはネイルをしていた小さい爪も、笑った時に出る頬のえくぼの位置もーーー正真正銘俺の知っているーーー俺と愛し合った憂なのだ。 「平さんーーーライン聞いても良いですか?」 突然言われ、俺は一瞬黙ってしまう。 しかしそれを悟られない様、右側のズボンのポケットからスマートフォンを取り出そうと下を向く。 これはーーー何か裏があるとかじゃなくて…純粋に連絡先を聞いていると思っていいのか… 「デザイン描いたら直接平さんに送りたくってーーーもしよかったらで良いんですけど… ーーー会社のパソコンからだと、ちょっと面倒になっちゃうのと、私家でデザインを書く方が、捗るので」 憂は笑って「いいですか」ともう一度尋ねた。 俺も「いいですよ」と何食わぬ顔で返事をして、自分のラインのQRコードを憂に見せた。
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