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「デザイン、なるべく早く仕上げたいですしーーー全然大丈夫です。
ーーー午前中に…カフェとかだと、どうですか?
デザインの案を出し合いながらお話ししても、迷惑がられないようなーーー長居できるお店だと良いですね」
憂はそう言いながらどこのお店が良いか考えているのか、視線を斜め上の方に向けた。
「スタパとかどうでしょう?
京帝大学前のスタパでしたらーーー家から近いので助かります」
俺はすぐに頷き、憂の意見に同意する。
「良いですね。じゃあそこで金曜に。
時間はどうしますか?」
「10時くらいだとどうでしょう?
ーーー夜だとちょっと…アレなので…早い時間がいいです」
ぼかす様な言葉を使った憂に、俺は思い切って質問を投げかけてみる。
憂はーーーどういうリアクションを示すだろうか。
「彼氏に怒られますか?」
憂は驚いた様に目を大きくしてから、アハハと声を出して笑った。
そうしてから耳にかけていた髪の毛を手で前に持ってくる。これはなんとなく照れ臭い時にーーー赤くなってしまう耳を隠す為にする、憂の癖ーーー
「そんなやきもち焼かれた事無いのでーーー大丈夫です…それに今はアメリカに居て…一年は帰ってこないので」
憂の言葉に、今度は俺が目を大きくした。
「アメリカ?」
「2年前から仕事でアメリカに行ってて…もう一年は帰って来ない予定です」
一年は、帰って来ない。
俺は憂の言葉を、頭の中でもう一度繰り返す。
これはチャンスなのではないかと、内心嬉しくなった。
見たことも、会ったこともない男からーーー憂を奪おうと考えてしまう、図々しい自分。
でも実際に俺は憂と付き合ってたんだしーーー憂の好きなタイプや、されて嬉しい事だって分かっている。
アメリカにいる男なんてーーー日本での遠距離恋愛と違ってほとんど会えないに等しいはずでーーーーこれは…またとないチャンスだ。
まるでーーー映画の様な、ドラマの様な願ってもないチャンス。
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