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「このくらいだとどうでしょう?」
「あー…もっと暗くても…
……黒に近くてもいいと思います」
俺と憂は少しずつ色味を調整して、何回か色を調整したものを改めて見比べる、という作業を繰り返した。
そうして10個程のサングラスの画像がずらりと並び、憂と俺はその10個の中でどれが良いかを話し合う。
俺は最後から2番目に作った色味が1番良いと思うと告げると、憂もそれに同意してくれた。
「私も同じです。1番最後に作ったやつだと黒っぽすぎてーーーオリジナリティ無いですよね」
俺も頷き、サングラスの色味はこの最後から2番目の色味で決めた。憂と俺はその後フレームの形やレンズのグラデーション等を話し合い、テンプルにロゴを入れるのを決めた。
その後はコースターとTシャツ、扇子のデザインを決め、それらは憂の書いてくれたデザインをベースに、俺がちょこちょこ修正して欲しい箇所や色味等に口を出す感じで終了した。
憂のデザインしたコラボ商品はどれも口出しする必要が無いくらいのデザインだった。
俺のざっと描いたデザインを参考に細かいところを書き直したり、付け加えたりはしたものの、俺がデザインを描く必要なんてなかったんじゃないかと思えた。
それほどに憂の描いたコラボ商品のデザインは秀逸で、世の中のトレンドにマッチしており、それでいて誰もが挑戦しやすいセンスと品性の良さに満ちていた。
付き合ったばかりの頃ーーーそんなにオシャレとは言えなかった憂がこうやって装飾品や衣類のデザインをしているのがなんだが意外だった。
憂は俺と付き合い始めてからオシャレに目覚め、俺も好きなカジュアルな服を好んで着てくれていた。
その憂が俺の知らない10年の間にすっかり大人の女性ーーー「綺麗なお姉さん」になっている。
それは当然の変化なのに、なんだか寂しいような気持ちになった。
俺の為にオシャレをして、笑ってくれたーーー10年前のキラキラとした華やかな…若く初々しい憂には二度と会う事も、まして時を戻して触れる事も出来ない。
俺はその記憶を飲み込むかのように口に含んだコーヒーを喉に流し込んだ。
先程作ったデザインをノートパソコンから駒場さんに送る憂の目を盗み、俺は腕時計に視線を落とした。
11時30分ーーーーー
憂とこの店で待ち合わせてから既に1時間半の時間が流れている。
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