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「めちゃくちゃ困りません?
記憶無くしたらーーー…友達とか親とかーーー
……恋人だって…誰?この人…って感じになりますよね…」
俺の言葉に憂は面白そうに笑って頷いた。
こっちは全然笑えない…当時の憂に起こった出来事が衝撃的過ぎて、頭が追いつかない。
「めちゃくちゃ困りました…!
ケータイも粉々になっちゃってるから、目が覚めた時は誰が誰だか分からなくてーーー…
私恋人とデート中に車に撥ねられて…目が覚めた時は恋人と母親が病室にいたんですけど…
まさに『誰?』って感じでした」
憂の言葉に、俺は更に混乱する。
当時と今を行き来するかのように目が泳ぎ、憂の目を見続けるのが困難な感覚に襲われる。
動揺する自分を落ち着かせる為、それと少しでも憂に動揺が悟られないようにする為に、俺はもうほとんど入っていないコーヒーカップに唇をつけた。
恋人ーーーーーー…?
そんな男ーーーいるわけ無いだろーーー?
「ーーー……その時の彼氏さんも…そりゃびっくりしただろうね…いきなり自分を忘れちゃうとかそんなーーー」
かろうじて言葉を返した俺は、コーヒーのおかわりを注文しようとメニュー表に視線を落とした。
こんな話の時にメニュー表を見るなんて失礼だと自分でも感じるけれどーーー…今はこうでもしないと、平静を装えない。
「やっぱり驚いたみたいですよ…!
でもなんだかんだまだ続いてるので、なんとかなるものなのかも」
「ーーーーー…」
鼓動が速くなり、心臓の音が頭の中で響く。
まだ続いてるーーーー…それはその時の恋人が、この間話を聞いたアメリカに行った恋人だということかーーー…
話が読めない。
なんでその男がーーー憂の恋人になってるんだ?
憂と10年前付き合っていたのは紛れもなく俺でーーー俺は憂の母親にだって会った事がある。
なのになんで憂の母親と病室に居たーーーその男が憂の恋人になっている?
もしかしたら憂は浮気をしていてーーーそれでその浮気相手とデート中に事故に遭い、俺を忘れたままその浮気相手と今日まで付き合っているのだろうかーーーー
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