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「じゃあ陽介(ようすけ)さん、事務室で今回のプロジェクトの内容をざっくり聞かせてください」 東堂さんは受付カウンターの中から出てきて、事務室の扉を開けた。 2人は東堂さんに促され、事務室の中へと消えていく。 事務室入るのやめよう… 水飲みたかったけど… 「平君、僕戻るまで受付よろしく」 東堂さんは事務室の扉を閉める瞬間、扉の間から顔を出して手をヒラヒラと横に振った。 俺は頷いてから、ゲストハウスの受付カウンターの中に入る。俺と取引先の女の方が知り合いだなんて、東堂さんは思ってもいないだろう。 まさか東堂さんが喜んでいた企画に、憂が関わっているなんて。そんな事俺だって夢にも思っていなかった。 『ど?面白そうじゃない? 昔の大学の先輩がさ、声かけてくれて』 この企画を知ったのはつい数週間前。 昼休みにいきなり声をかけられ、東堂さんに届いたメールのコピーらしきものを見せられた。 『地域活性化コラボプロジェクト』 俺の目に1番最初に飛び込んできたのはその文言だった。 どうやらメールの相手は、東堂さんにこのプロジェクトに参加しないかと誘っているらしい。 自分達の会社とコラボした場合のメリットを連ね、企画に発生する料金は全て自分達側で持つからとも書いてある。 具体的な内容はこうだ。 最近雑誌などにも取り上げられている大手企業のUryu.(ウリュー)。 環境に配慮した機能的な衣服を作ることで有名で、更に日本の伝統工芸や染め物を衣服に取り入れるなど日本の古き良き文化を取り入れることにも力を入れている。 それでいて物価上昇が続いてある近年も価格は消費者が手に取りやすい価格をキープしており、生産者にも消費者にも優しい企業と言われている。 実際にUryu.の製品をきっかけに日本の伝統工芸や染め物を知り、買うようになったという人の話もよく聞く。 そのUryu.が今期企画したのが地元の地域とタッグを組み、コラボ商品やイベントなどを行う『地域活性化コラボプロジェクト』。 Uryu.の店長である駒場陽介さんーーー先程の顎鬚の男性がココ…ワイナリー『アルマディージョ』のオーナーである東堂さんと古くからの友人だということもあって、今回この企画に声がかかった。 具体的にどんな企画が用意されているかというと、アルマディージョのロゴが入ったTシャツやグッズの制作、販売。 Uryu.の商品を10,000円以上買った方にワイナリー見学無料券が抽選で当たり、その中に含まれるブドウの摘み取り体験やワイン作り体験、試飲なども全て無料になるというもの。 この地域で行われてる夏祭りでUryu.とアルマディージョでコラボした出店を出すというもの。 3つの企画が、メールの中には書いてあった。
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