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「ーーー平さんって、私と同い年で…
……京帝医科大だったんですよね?」
突然投げられた質問に、俺は「ですです」と自分らしく無い相槌を打ってしまう。
「それなら私の恋人と同じです。
私の恋人も同い年でーーー京帝医科大の出身なんです。それで今は医師をしていて…技術の向上と研究も兼ねてーーーアメリカに」
頭を鈍器で叩かれたような衝撃。
という事は俺はーーー
ーーー憂の恋人を知っているーーーー
「黒谷丈って、覚えてます?」
「ーーーーー…!」
黒谷丈ーーーー…
俺はその名前に驚きを隠せない。
俺はアイツにーーー良い印象なんて一つもない。
『ーーーほんっと目障りな金髪ーーー…
いいな、お坊ちゃんはーーー
何不自由無く、愛情いっぱいに育てられてーーー
だからそんな呑気にヘラヘラしてられんのなーーー』
青みがかった白い肌に、切れ長の一重瞼。
少し猫背の細身の体型。
黒い髪全体にパーマをかけた、瞳が隠れるくらいに長い、うざったい前髪。
成績は学年で一番優秀だったがーーー人と話す事をとにかく嫌いーーーいつも1人で行動していてーーー誰かと喋っていた姿を俺は一度も見たことはない。
人を蔑む様に見つめる…アイツのあの目が大嫌いだったしーーーアイツだって俺を最初から嫌いだったと思う。
人間味の無さというかーーーいつも人を見下しているかの様なアイツの態度が俺にはいつも不愉快だった。
「覚えてます?黒谷丈」
もう一度聞かれ、俺は我に返った。
覚えてるよーーーあんな性格悪い男…
忘れたくても忘れられるわけ無いだろーーー…
「覚えてますーーー…
ーーー…一匹狼タイプだったので…
…全然話した事は無いですけど」
俺のリアクションを見た憂はアハハと声をあげて笑った。間違っては無いし、俺はヤツの印象をこれ以上良いようには言えない。
「あまり良い印象無いですよね。
丈が自分でーーー平さんからは嫌われてると思うって言ってました」
「え゛」
咄嗟に変な声を出した俺を見て、憂はまた笑った。
「一昨日、丈に聞いてみたんです。
平さんの事を覚えてるか。
ーーーそしたら…俺は嫌なヤツだったから、覚えられてても良い印象はないと思うって」
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