53人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
そう言いつつも心の底では、目移りして欲しいし、目移りさせてやろうと思っている。
黒谷丈は俺の名前を憂から聞いた時、なんと思ったのだろう。そもそも黒谷丈は、俺と憂が付き合っていた事を知っているんだろうか。
知っていたら俺の名前を憂から出された黒谷丈は、さぞ焦っただろう。
俺の考えた仮説はこうだーーー
学生時代、俺と付き合っていた憂に黒谷丈はひっそりと憧れていた。
そして偶然にも憂の交通事故の現場に居合わせ、応急処置を施して病院に着いて行った。
そこで憂の側にいた黒谷丈は、病院へ来た憂の母親と合流する。
そして憂が目を覚ますと、憂は俺のことを含め、事故に遭う直前から数年前の記憶を無くしていたことを知った。
そうして憂の母親の合意の元でーーー自分が憂の恋人だと嘘をついた。母親とは事前に口裏を合わせておく事で憂の信用を経て、黒谷丈は現在まで憂を自分の恋人にしている。
もしかしたら黒谷丈は憂の事故現場にたまたま居合わせたのでは無くてーーー憂をストーカーとまではいかなくても観察したり様子を伺う様な行為を続けていてーーーそれで憂の事故現場に遭遇したのかもしれない。
そうでなければそんなーーー憧れていた女性の事故現場に偶然居合わせるなんて事、起こり得るだろうか。
そんな何百分の一の確率…いや…何千万分の一の確率、自然に起こると考えた方が不自然だ。
俺の仮説がどこまで正確かは不明だが、とにかく黒谷丈が、憂を騙してる事は間違いない。
黒谷丈は憂の過去を捻じ曲げ、今もずっと嘘をつき続けてーーー憂を自分のものにしている。
そんな黒谷丈から憂を奪ったってーーー別にバチなんて当たらないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!