【4】

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「あ!!!来た来た!」 俺と東堂さんを見つけるなり声を出したのはUryu.の店長の駒場さんだった。駒場さんは黒いベレー帽を被っていた。白いTシャツにネイビーのジャケット羽織り、ボトムスはジャケットとセットアップと思われるスラックスを履いている。靴は珍しいデザインの革靴で中央の部分にデザインが施されていた。 駒場さんの後ろに隠れるようになっていた憂は俺と東堂さんの方へと顔を出し、小さく頭を下げて微笑んだ。 憂はニット素材のショートジャケットにブラウスを合わせ、ボトムスはワイドシルエットのパンツを合わせている。雨なのに白いボトムスに白いブラウスを合わせている憂が、なんだか不思議だった。 しかも今から食べるのは焼き鳥だしーーーもしタレが付いたら、とか思わないんだろうか。 昔はそういうのーーー気にしてたけど。 「雨の中急遽来ていただいて、ありがとうございます」 憂は俺と東堂さんを交互に見つめてもう一度頭を下げた。鎖骨の所で切り揃えられた髪が前に流れると、憂は頭を上げると同時に髪の毛を耳にかけた。立ち気味の小さい耳にはパールのイヤリングが付けられており、それはダイヤモンドとは違う、内に人を引き込むような輝きを放っていた。 「立ち話もあれなんで、入りましょうか」 傘を閉じながら告げた駒場さんに促され、俺達は壱ノ酉の中へと入った。カウンター席を中心にした店内は混雑していたが、店員の女性に憂が名前を告げると俺達は店の奥側にある予約席に通された。 掘り炬燵の席に案内され、それぞれ向かい合った席の奥側に駒場さんと東堂さんが座り、俺と憂は向かい合って外側に座る形となった。 なんか憂と真正面から向き合うとーーー柄にもなく緊張してきてしまう。
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