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「ーーー…何にしよっかな…いっつもワインとイタリアンなんで、楽しみです」 メニュー表を開きながら、東堂さんは笑って言った。 東堂さんはよくノーヴの食堂で昼食を食べているから、余計そう思うかもしれない。俺はコンビニで買ったものか家から持ってきたものを食べるし、ヤマさんも家からお弁当かおにぎりを持ってくるけど、東堂さんと健太は社員割引を使ってノーヴでランチを食べてる事が多い。 まぁーーー多分健太は近々愛妻弁当でも持ってくるようになるのだろうけど。 「ここは鶏皮が有名なんだよ。 佐崎鶏皮ダメだけど、ここのは食べれるもんね?」 駒場さんに言われた憂は頷く。 憂は意外にも親知らずは全て生えているそうなのだが、顎のライン細くて小さい卵形だ。 「ここのは食べられるんです。3日間かけて炭焼きにするから脂が落ちてーーー表面パリパリで中はジュワッとしてて、オススメです」 憂は笑って、メニュー表の鶏皮を指差した。 ピンクベージュのマニキュアが塗られた小さな爪は典型的な横爪で、昔から横爪の人間の手先が器用だと言われるのは本当かもしれないなと思わされる。 「でもなんでも美味しいので、好きなの頼んで欲しいです。 ーーー好きな部位とか、あります?串焼き盛り合わせとかでも、いいと思いますけど」 不意に憂と目が合った俺は、柄にもなく心臓が忙しなくなり、メニュー表に視線を落とした。 本当ーーー俺らしくないーーー 目の前に座っている憂を、こうやって意識して、少なからず緊張してしまうなんて。
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