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「とても素敵なデザインでしたよ。 ーーーTシャツは私の考えたものより、平さんのデザインの方がジェンダーレスでファッションに取り入れやすそうでーーーかなり参考にさせていただきました」 俺はなんだか照れ臭くなって、意味もなく口元に手を持ってきてしまう。 「いや…あれはほとんど、佐崎さんが直してくれたから」 俺の様子がいつもと違うのが面白いのか、東堂さんは俺の様子を見て面白そうにぷっと笑った。 「謙遜してます、珍しく」 指を指して東堂さんに言われた俺は苦笑いを浮かべ「やめてくださいよ」と言った後で、ビールをもう一口飲んだ。 「本当はこんなに謙虚じゃない時あるから」と、東堂さんが更に付け足すと、憂と駒場さんは声をあげて笑った。 「謙虚じゃなくていいんだよ。 商売する時は特にーーーちょっと図々しいくらいがいいし…『俺がほとんど描きました』みたいに言っても、佐崎怒んないから」 卵焼きを箸でつまみながら告げた駒場さんの言葉に「それは流石に怒ります!」と憂がツッコミを入れる。 ツッコミを入れた憂の左手の薬指はまだ空っぽで、それが少なからず俺を安心させる。 付き合っていた頃の憂からは、上司である駒場さんや、取引先の人間である俺や東堂さんと同じテーブルでーーー女1人でこうやって上手く立ち回る姿なんて想像も出来なかった。 出会ったばかりの憂は男性と食事すらした事が無く、絵ばかり好んで書いていた。 あの憂がこうやってーーーちゃんと酒の席で話をして笑い、営業をしているのが、いまだに不思議だった。
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