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「結構早いペースで飲みますね…大丈夫ですか?
佐崎さん、意外にお酒強いんですね」
東堂さんが憂に尋ね、憂は少しだけ照れたように困った笑みを浮かべる。
なんとなく、下心がありそうな東堂さんの質問の仕方にも、その東堂さんに笑顔を向けた憂に対してもなんだか嫌な気持ちにさせられる。
ていうか何で今ブラッディ・メアリーなんて頼んだんだよ…。俺も憂の事は言えないが、憂のハイボールはまだ3分の2以上グラスに入っている。頼むなら酔いの回りとかもう少し見てーーーーハイボールもっと少なくなってからにしろよ…
「お酒強くは無いんですよ、全然ーーー。
ただ此処のブラッディ・メアリー…トマトジュースとレモンにすごくこだわってて、早く頼まないと直ぐ無くなっちゃうんです。それで。
ーーーー平さんも、もしかして知ってました?」
突然話を振られた俺はぎくりとして、身構える。
東堂さんに笑顔を向けた憂に嫉妬してるなんてーーー絶対にバレたくない…
「いえーーー知りませんでした…
佐崎さんが注文したのを見て…久々に飲んでみようかなって思っただけで…そうだったんですね」
俺は「それならラッキーでした」と付け足し、先程頼んだ日本酒を一気に飲み干した。
憂は俺のそんな様子をみて笑い「お酒に強いのは、どうやら平さんみたいですね」と東堂さんに告げた。
憂はその後自分と俺の手元にやって来たブラッディ・メアリーを「これこれ」と言いながら飲みかけのハイボールの隣に並べた。
「もしよかったら飲んでみますか?」と憂が駒場さんに尋ねると、駒場さんは思いっきりしかめっつらをしてみせた。
笑った東堂さんに理由を聞くと、駒場さんはどうやらトマトが大の苦手で、憂はそれを承知でワザとこう尋ねているらしい。
「これだけはどうもねーーー…レッドアイとかもだけどトマト入ってるともう絶対飲む気になんないもんね…」
駒場さんはそう言って手元にあったメニュー表で、憂のブラッディ・メアリーと自分の間に壁を作った。
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