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【5】
忘れ物がないか何度も確認をしてから、俺は旅行用のリュックに荷物を詰め込んだ。
荷物は最小限にしたものの、4泊5日の旅行となるとそれなりの荷物量になった。久しぶりに大きく膨らんだリュックを背負いバスで空港まで向かい、健太と合流して飛行機に乗ったら、待ちに待った男2人旅の始まりだ。
俺は待ち合わせ場所にはいつもギリギリに着くタイプなのだが、今日は1時間ほど早く空港にやって来た。
理由は空港限定の犬田彦コーヒーのカフェオレが飲みたいからだ。健太も誘ったのだが、コーヒーが嫌いな健太は少しでも寝ていたいからと俺の誘いを断り、俺は1時間早く1人で空港を訪れる事になった。
目的通りに犬田彦コーヒーのカフェオレを購入し、旅行のプランや、旅館の側にある飲食店をもう一度再びチェックする。
会社に買って行くお土産も、何が良いかなと迷い一通り目を通す。今回は会社だけではなくて、Uryu.のスタッフ分のお土産も買ってこようかなんて考えたりする。
「ーーーーーー…」
スマホを見ることに疲れて顔を上げた俺の視線は、犬田彦コーヒーを出た先の窓際の席に座る女性に一気に引き寄せられた。
鎖骨の辺りまで伸ばした黒い髪に、華奢な後ろ姿。珍しく目が覚めるような青いカーディガンのセットアップを着て、紺色の生地に青い小花柄がばら撒かれたプリーツスカートを履いている。
左腕でキラキラと光る腕時計。
ーーーー憂だ。
俺は驚き数秒目が離せなくなった。
なんで憂がーーー空港のロビーにいるんだ?
俺は疑問に思いつつ自分が座っていた席を立ち、会計を済ませてから憂の方へと近づく。
憂も先ほどの俺と同じように、手元のスマホに視線を落としている。
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