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「いいね。 ちょっとずらしたゴールデンウィーク。 人少ない方がーーー…ゆっくり楽しめるしね」 俺はこれまで自分が何も言葉を発していない事に気づき「そうだね」とだけ相槌を打った。 黒谷ってーーーーこういうやつだったっけ。 大学の頃は前髪で目を隠すようにしていて誰とも話さなかったからーーー最初見た時、俺にはこの男が黒谷だとは分からなかった。 それに見た目の変化だけじゃなく、俺には黒谷がこうやって人と話しているのが信じられない。 誰とも話さず、目も合わせなかった、10年前の黒谷とは、話し方や外観ーーーー雰囲気も含めて全くの別人のような気さえしてくる。 俺の目の前にいるのは本当にーーー俺が知っている黒谷丈なんだろうか。 「憂、行こ。 久々にランチしてーーーゆっくりしよ。 ーーー平さんも旅行、楽しんで」 黒谷は俺にそう告げると歩き出し、憂は俺の前を去る瞬間小さく頭を下げ「またアルマディージョで」と微笑んだ。 歩き出した2人に目をやると黒谷は憂の小さな手を握って歩いている。 当たり前なのだが、憂と黒谷が紛れもなく恋人なのだと思い知らされ胸がチクリと痛くなった。 何故黒谷はーーー今日本に帰って来たのだろう。 憂の話では、黒谷は後1年はアメリカに居て帰ってこないはずだったのにーーーなんでこんな急に日本に帰って来たのだろう。 黒谷の引いていたキャリーバッグは、4泊5日の旅行に行く俺の背負っているリュックと比べると、かなりの大きさのものだった。 黒谷もゴールデンウィーク前に帰って来てーーー憂と過ごすつもりなのか…? でもアメリカにーーーゴールデンウィークなんてあるんだろうか…そもそも日本だと、ゴールデンウィークに営業している病院なんてごく稀だけどーーー
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