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はっきり言われて──いやだ、私、ちょっと傷ついてる。いやいや、そうよ、日曜の晩の私は本当に迷子の迷子の子猫ちゃん状態だったから、影山さんは放って置けなくて……!
「乗り掛かった舟ですので、ここで彼女を放り出すわけにもいきませんから」
「ふうん」
女性はにやにやと笑いながら、影山さんと、わずかに見える私の姿を見比べる。
「まあ、判りました。引っ越しはあのバカ男にもちゃんと伝えてよね」
「はい、それは、もちろん」
答える影山さんの隣で私も何度も頷いた、でもどうやって知らせようか……一時期だけ通信アプリのブロックを解除するしかないかな。
お隣さんに別れを告げ、自分の部屋に入った。人がいない部屋って、こんなに暗くて寒いんだな。
「斎藤さん、このままじゃ本当に身に危険が及ぶ。周りにも迷惑をかけてしまっているから、明日にでも引っ越そう」
「ええ!?」
家も決まっていないのに!?
「警察に相談はしたほうがいいけど、24時間警備してくれるわけじゃないし、本当に拘束力があるわけでもない。接近命令とか出してくれても容易く破れるし」
影山さんが考えをまとめるかのように語り出す、本当だ、ストーカー規制法だよね。
「でも、明日じゃ入居できる家なんか決まりません……」
今日これから契約などできるのか、明日の午前中でもその日のうちに引っ越し可の物件なんて……探せばあるだろうけど。
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