#7 影山さんのこと 私のこと

20/22
前へ
/346ページ
次へ
「うちに間借りでもいいけどね、部屋は余ってるし」 3LDKだ。仕事場とペットが飼える家との兼ね合いであの場所になったと言っていた。 「でも引っ越しは一応事前通知がいるんだ、大型の荷物の搬入は怒られるかも。だから一旦は倉庫に入れておけばいい、うちの倉庫があるから」 「そんな……」 そこまでお世話になるわけには。 「斎藤さんは来なくていいよ、引っ越しは斎藤さんが仕事の間にやっちゃうから」 え、お任せパック的な? 「それって、いくらくらいかかるでしょう……」 「そんなのいいよ、俺の提案だし、俺が払う」 影山さんの笑みが神々しく見えた。確かに影山さんの言うとおりだ、いつまでここにいたら周りに迷惑をかけっぱなし。軍資金は預金から出せないこともないだろうけど、全額なくなってしまっても心もとないから。 「すみません……よろしく、お願いします、後日必ずお返ししますから」 頭を下げれば影山さんはいいのに、と笑顔で言ってくれる。 「よし、善は急げ。今日はなくなったら困るものとか、見られたくないものを持ち出しておこうか。それと鍵は預かっていい?」 本当に私がいない間にやっておいてくれるんだ、本当に申し訳ない……そう思いながら鍵の束からこの部屋の鍵を外して渡した。お礼は本当に後日……これほどお世話になっていて、何をしたらいいだろう。
/346ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3570人が本棚に入れています
本棚に追加