溺愛社長は甘え下手な彼女を離さない

#7 影山さんのこと 私のこと

あ、余計なことを。成人男性で億単位の収入があるなら独り立ちしていてもおかしくないよね。

「一番はリズかな。ずっとペットなんかなく暮らしていた家に猫―？　って言われちゃったって、でもその前から家の敷地でマイクロブルワリーやってたから、出てけとは言われてたのもあるけど」
「出発はご自宅だったんですね」
「うんそう。ああ、うちの最寄り駅の近くにブルワリーがあってさ。子どもの頃からなにやってるんだろうって興味があったんだよね。で高校上がってバイト始めるって時にそこに働き始めたらすっかりはまって、醸造の免許取って、でも場所借りてビール作りを始めるほど資金もないから自宅の庭に小屋作って始めたもんだから、ガーデニングが趣味の母にずっとブーブー言われてて」

影山さんは楽しげに話す、お母さんもこうしてご飯を届けるくらいだ、仕事自体は認めているんだな。

「男の一人暮らしだから健康面も気になって、みたい。でも量が多い時もあるから、よかったら斎藤さんも食べていいよ」
「え、でもせっかくのおふくろの味ですのに」
「大丈夫、食べきれないと店に持っていって従業員に食べてもらうこともあるくらいだから、よかったら」
「ありがとうございます、そういうことなら」

見れば煮物が多いな、日持ちするようにかな。おいしそう……ありがたくいただこう。