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「一緒でも構いませんっ。影山さんのお店に行こうと思っていたんです!」
「『Geborgenheit』? あら、すっかりビールに目覚めちゃった?」
私は曖昧に「はい」と返事をしていた。影山さんは今日も『よろずや』にいるんだろうか、4つのお店を転々としているようなことは言っていたけれど、会いたいけど会いたくないと初めて思った。
はたして、横浜駅で下車しそのお店へ向かう。飲食店が立ち並ぶエリアだ、畑さんも『Geborgenheit』の場所は知らなかったのか、私の後をついてくる。
「おお、ここかあ」
店の名前は知っているから看板を見ただけで声を上げていた。
引き戸を開ければ中から元気な声で「いらっしゃいませ」と声が上がる。
特にその声が大きかったわけじゃない、でもカウンターの中にいる影山さんが一番に目に入ったのは、どうしてだろう。その笑顔がおやとでも言いたげな表情になる、後ろにいる畑さんが目に入ったんだ、その畑さんは「あらあ」と声を上げ、私の背中を思い切り叩いた。
「いつの間に」
小さな声も聞こえた、いえ、本当にそんなんじゃないんです。
「じゃあテーブルの方がいいかな」
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