#9 影山邸での初めての週末

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「斎藤さんが置いてくれたんだね、ごめん、俺、どこに置いてただろう?」 いつもティッシュを敷いたりしないんだろう。 「洗面所にありました、濡れたらいけないと思って」 「そっか、ありがとう。駄目だな、すっかり忘れてた」 影山さんは笑顔で言うと、それをすぐに首にかけた、やっぱり大事なものなんだね。 「昨夜は遅くまでお仕事されてましたね」 「ああ、ごめん、起こしちゃった? 大抵はメールなんだけどね、なんか緊急だったみたいで電話がかかってきて」 「いえ、お気になさらずに、居候は私ですし。むしろ英語、うまーって感動してました」 「ありがとう、ほぼ仕事で覚えた英語だから文法とか発音は怪しいんだけどね」 「そんなことないです、それでお仕事できているんですから、十分ですよ」 なにより楽し気な話し声がよかった、つくづく影山さんは仕事が好きなんだと判る。 そうしてわずかなひと時を共に過ごして、影山さんは9時半頃には仕事に行ってしまった。栄町のブルワリーに行ったり、お店の開店準備を手伝ったりするそうだ。そうなるとあちこち店舗があるのは大変だな、影山さんもスーパーマンだよ。 夜はまたお店においでと言ってもらえたので、伺うつもり。それに合うように出かけようかな、不動産屋に野毛のマンションの解約と次の部屋の相談だ……ネットで見繕って予約、入れておけるかな。
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