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次の日の朝。夜の間に雪が積もっていた。
ざくざくざくと音をたて、運動靴で進んでいく。
太陽の光ときらきらした白の世界。
私はカフェに向かわずにいた。
坂道の下まではいけたけど登りはせずにUターンした。
結局、挨拶程度の仲でとどまった。
見た目を変えても変化は訪れない。
小林くんとの半年間の短い恋が終わった、のだろう。
ため息をついて、白い息は舞い上がる。
気持ちを押し込めるようにざくざくと雪道を歩いていると、ふいに後頭部に雪だまを投げつけられた。
「いたっ」
痛くて後頭部がひやっとして、振り返る。
振り返ると、そこに小林くんがいた。
「瀬野」
「……ひどいよ、小林くん」
私がむっとすると、小林くんは少し笑った。
「ごめん。瀬野が早足すぎて追いつけないから」
「……何か、用?」
「何で逃げるの?」
どくどくと鼓動が鳴る。
「逃げる……?」
「何で避けるんだよ、急に」
「さ、避けてないよ、じゃあまた学校で」
手を軽くあげて、ふいっと視線をそらして、小林くんに背を向けて歩きだす。
ざくざくざくと歩くと、小林くんは声を張り上げた。
「俺、付き合ってないから」
「……え?」
思わず立ち止まり、躊躇しながらもちらりと振り返ると、
「気にしてるの? 俺、葉山雪乃と付き合ってないよ。瀬野の親友って知ってたけどさ、告白されて振った。瀬野の大切な親友を傷つけたのは、ごめん」
私の頭は少し真っ白になる。
そしてふと、声が漏れた。
「……振っ、た?」
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