魔法のポケット

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 差し出されたビスケットは、とても美味しそうです。  一個一個丁寧に包まれたお菓子が、簡単に買えないことはネリネにだって分かりました。そんな大事なものを全部くれるなんて。 「ネリネ、誕生日おめでとう。ネリネは僕にとって、大事でかわいい大好きな弟だよ。だから一緒にいてくれるだけで、生きててくれるだけでいいんだ」  まっすぐな言葉までプレゼントされて、我慢の鍵が外れます。  笑いながら泣いてしまうなんて、なんだか可笑しいです。けれど、ネリネの涙は止まりませんでした。 「ありがとう。でもね、こうして幸せに生きていられるのは、兄ちゃんがいてくれるからだよ。だから、ビスケットは兄ちゃんが食べて。僕も兄ちゃんが大好きだから……」  ライラは少しポカンとし、目を潤ませて微笑みます。手の上のビスケットが、ゆっくりと右ポケットに戻っていきました。 「いつかに話したことがあるだろ。どこかの国の面白いビスケットの歌の話。覚えてるか?」  歌詞がとても印象的なさ――言いながら、ライラは軽くポケットを叩きます。小さく軽い音がしました。 「ポケットを叩くとビスケットが増えるやつ?」 「その通り!」  取り出された小袋を、ネリネは見つめます。開けられた袋の中には、四つに割れたビスケットがありました。自由に入った線が、色んな形のビスケットを作り出しています。 「ほら見てごらん、増えただろ?」 「ふふっ、本当だ」  ライラは素早く、小さめ二つを取り出しました。それから、残りをネリネへと差し出します。 「一緒に食べれば、幸せも増えるよな」 「うん……!」  まだ食べていないのに、嬉しさや愛しさが体いっぱいに広がりました。  しっかりと受け取って、小さなビスケットを一つ摘まみます。そうして、どちらからともなくタイミングを合わせ、口の中に放り込みました。    一緒に食べるビスケットは、甘くて優しい味がするのでした。
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