僕だって

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 けれど、ワクワクが形になってくれることはありませんでした。たくさんのお宝が突っぱねられます。  幾つかは売れましたが、手に乗せられたのは硬貨一枚だけでした。悲しくて、その場で硬貨を見つめてしまいます。 「こっちは仕事があるからね。用が済んだなら早く帰っておくれ。このゴミは元の場所に捨てておくれよ」  けれど、そう言われてしまったので、仕方なくごみ捨て場に戻ることにしました。  硬貨を右ポケットに入れて、重いゴミたちを抱えます。行きの道より減ったはずが、何倍も重くなっていました。  気付けば空が半分オレンジ色です。ライラより早く帰宅しなければと、心が走り始めます。  けれど、ごみ捨て場に戻ったときには、オレンジ色さえ塗り潰されていました。    ネリネは慌てて家に帰ります。月にも遅れをとったせいか、どこからかライラの声が聞こえました。何度も何度もネリネの名前を呼んでいます。声は時々、枯れてしまっていました。  勝手に家を出たうえ、小さな硬貨しか持ち帰れず怒られてしまうかもしれません。  少し隠れていたい気持ちになりましたが、呼ぶ声が必死だったので、それもいけない気がしました。 「お兄ちゃん!」  大きな声で答えると、見事なほど早くライラが現れます。  息を切らしたライラは、聞いたことのない尖った声で怒りました。眉の間に皺が走っています。 「ネリネ、どこ行ってたんだ! 心配したぞ!」  ですが、すぐに皺は消え、右手をぎゅっと握られます。  ライラの手は、ネリネに負けないくらい冷たくなっていました。ライラの瞳は潤みだし、言葉が本音の塊であったことを教えてくれました。  とてもとても、心配してくれたのです。
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