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「ネリネに何かあったらと思ったら怖かった!」
「お兄ちゃん、ごめんなさい。あの、僕ね……」
繋がっていない左手を、ポケットの中に突っ込みます。
「お金……一枚だけど……あれ?」
指先で捜索しましたが、硬いものに触ることが出来ませんでした。代わりに見つけたのは、小さな穴でした。
どうやら、ポケットが破れてしまい、お金が逃げてしまったようです。色々なものを持っていたからか、帰るのに夢中だったからか、全く気付きませんでした。
悲しくて悔しくて、ライラと同じ目になります。
「僕、僕ね、お兄ちゃんの役に立ちたくて、お金をね……もらおうと思って。でも、駄目だった……ポケット破れちゃったし、何にもない……」
心が出ていかないよう、我慢していましたが駄目でした。ボロボロとやるせなさや悲しみが飛び出していきます。
「……そっか、そうだったんだ。ありがとう。あのな、ネリネ」
ライラの優しい声が聞こえました。続きを聞こうと、涙を拭って顔をあげます。
その時でした。突然、お腹が叫びをあげます。どうやら、お腹も我慢していたようです。聞こえた瞬間、びっくりするほど空っぽになっていることに気付きました。
「ふっ、ふふっ」
緩んだ笑い声が聞こえます。
「とりあえず、まずはパン食べるか?」
「……うん!」
ネリネの残念な気持ちは、まだ取りきれません。それでも可笑しさには勝てず、笑ってしまうのでした。
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