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大好きなお兄ちゃん
「ネリネ、行ってくるからな。温かくして寝てるんだぞ」
「うん、行ってらっしゃい兄ちゃん」
家と呼ぶには心もとない空間から、ネリネは手を振りました。兄のライラは、これから辛い仕事に行きます。
見送ると、ネリネはすぐ横になりました。纏っていた薄い布を、改めて体に添わせます。
そうして手だけは出したまま、破れた本を優しく捲りました。乾いた咳が出て、少し辛いです。
でも、ネリネにはそれ以上の辛いことがありました。それは、病気がちで働きに出られないことでした。
ネリネとライラには両親がいません。二年くらい前、まだネリネが八歳のとき、貧しい暮らしの中で死んでしまいました。
それからは、たった二人で暮らしてきました。ライラはたった一人の家族なのです。だからこそ助けたいのに、ネリネにはそれが出来ませんでした。
それどころか、お荷物にしかなれていない――願いと喧嘩する現実に悲しくなってしまいます。ライラが大好きだからこそ、自分の存在が重荷になることが何より辛いのです。
一人で二人分の生活を繋ぐのは、見るからに大変そうでした。
僕なんかいない方がよかったんじゃ――染みだらけの天井を眺め、何度そう思ったことでしょう。
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