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「はい、先生! あの……」
「何かな、城将空子さん……。あ! あなたは確か増田陽太先生が言っていた、特別な体質の生徒さんですね……」
「あの、母から、呪文を聞いているのですけど……」
「そうですか。でも今は、あなたが呪文を作ってください。あなたのオリジナルでお願いします」
「わ、分かりました」
急いで呪文を書き上げる空子だった。
「先生、できました」
「では、発表して下さい」
「はい。マナスを供給する補助魔法の呪文です。『私はいつも〇〇ちゃんを応援しています!』『ガラマジ発動!』『ファイトー、いっぱーつ!』です。解除の呪文は、『お疲れ様でしたー』です」
「良いですね。何かその呪文でも、例の体質が発動しそうで怖いけど……」
危惧する千子だった。空子は、自分の作った呪文が気にったのかニコニコとして読んでいる。
「さて、最後は石川静流さんですね」
静流は、国語辞典を脇に置いて黙々と書いていたが、やっとできたようだ。
「先生、できました」
わざわざ手を上げる静流。
「では、発表して下さい!」
「はい。私は、水系の魔法を、会得したいと考えていますので、このような呪文を考えました。『現世に、あまねく御座る、水霊よ、吾が身を包みて、海神とならん』『ガラマジ発動!』『点滴穿石!』そして、解除呪文『泡沫夢幻!』」
「はあ? なんて言ったのさ? 厨二臭満載の呪文じゃんか。静流たんは、それ覚えんの?」
奈々が静流のノートをのぞき込みながら茶化す。
「し、失礼な。どちらかというと理系の私が、全存在をかけて作った呪文です。きっちり覚えます」
「素晴らしい五七調の呪文ですね! 五七調は、非情に勢いや力強さがあります。是非覚えて下さいね」
「はい!」
普段はクールな静流だが、千子に褒められて頬を赤らめた。
「さて、皆さんそれぞれ、自分がやってみたい魔法の呪文ができました。でも、いくら呪文を唱えても『マナス』を体内に溜めないと魔法は発動しません。くれぐれも、まず体に『マナス』を溜める練習を絶やさずしてくださいね」
「先生、『マナス』が溜まったってどうすれば分かるのですか?」
静流が、ノートをとりながら聞く。
「そうですね。慣れれば、体全体に力がみなぎる感じで分かります。視覚的には、体が光りだしたら、レベルの低い魔法は使えるようになります。更に、光に色がついて、輝きだしたら強いレベルの魔法が使えるようになるのです。初心者は、それが目安ですね。では宿題です。次の時間までに呪文を覚えて来て下さいね」
千子が、言い終わると2時間目終了のチャイムが鳴った。
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