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Ⅰ 入学式の朝にて
「城将空子ー! レイアちゃんと神楽耶ちゃんがお迎えに来たよ!」
階下から母が叫んでいる。
「はーい! 今、最終チェック中!」
空子は、姿見の前でショートボブの前髪を軽く分けた。気を付けをして、にやけながら自分を見る。パールホワイトのセーラー服。カラーとプリーツスカートは薄いピンク色だ。カラーには水色の三本線が縁を飾る。
真っ赤なスカーフの端を摘まんで、茶色のスカーフ留めを軽く締めた。
「うふ、私って可愛い?」
鏡に向かって言ったものの、自分で少し引いてしまった。
「くうこー!」
母のトーンが荒くなっている。
「はい、はい、はい」
革の通学用リュックを背負うと、空子はドタドタと玄関に。
「入学式の日に、友だちを待たせちゃ、だめじゃんか!」
空子の頭をぐりぐりとなで回す母。
「もう、やめてよ。私もう高校生だよ」
母を横目で見ながら手櫛で髪を整える。
「そうだよな。空子も今日から高校生か。背丈は変わらんが、もう16才なんだな。あの学校は一切保護者が立ち入れないから、空子の晴れ姿を見れないのが残念だけど……」
「仕方ないじゃん。校則なんだから。じゃあ、いってくるね」
リュックを背負いなおして、ドアを開ける。ふわっと吹き込むあたたかい風。緑の香りがする。
「行ってらっさーい! 春風とともにあらんことを!」
「何、そのハイテンション。学校へ行くのは私だし」
母に小さく手を振る空子。
振り返ると、門扉で友人二人が待っている。今度は、大きく手を振る空子。
「おはよう。レイアちゃん。神楽耶ちゃん……って、あれ!」
レイアと神楽耶の姿を見て、茫然自失となる空子。
制服が私の着ているものと全く違う!
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