Ⅰ 入学式の朝にて

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 セーラー服の空子(くうこ)に対して、レイアと神楽耶(かぐや)は、エンブレムの付いた紺のブレザーにネクタイ。グレーのスカートはチェック柄だ。 「な、何で? 入学するのは同じ学校だよね?」  リュックを降ろしてガサガサと書類を探る。あった。 「みんな、『桃薔薇(ももばら)魔法(まほう)女学園(じょがくえん)』に行くんだったよね」  入学式案内に書かれてある名称を指さし、レイアと神楽耶に見せる。 「そうどすえ。入学周知会の時には、三人一緒やったやないどすか」  ロングヘアで姫カットの月乃屋(つきのや) 神楽耶(かぐや)がおっとりと答えた。 「制服の採寸も一緒にやったじゃないですか。同じ学校で間違いありません」   きっぱりと答える阿弓(あゆみ) レイアは、ツインの三つ編みお下げ。 「なんでだろう? セーラー服がいいか、ブレザーがいいか希望調査ってあったっけ?」 「いいえ」  レイアも神楽耶も首を振る。  空子にしてみれば、一人だけ違う制服なのだ。  しかもブレザーに対してセーラー服!   これって、何かの間違い?   家に送られてきた制服は確かにセーラー服だった。  限りなく心細くなって来た。 「ひょっとしたら、何かの間違いかもしれませんし。学校で確認して見ればいいと思います」  レイアは、ポーカーフェイスで冷静だ。  それに比べて、神楽耶は。 「そのセーラー服、空子はんによう似合うてますで。かいらしいわあ!」 「じゃあ取り換える?」  半泣きで訴える空子。 「遠慮しときます」  即答の神楽耶。 「いけず……」  空子ぼそりとつぶやく。  制服に関して不安を感じつつも、三人は学園に向かう。  本日、『桃薔薇魔法女学園』入学式。
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