Ⅰ 入学式の朝にて

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 学校が近づくにつれて、他にも生徒が数人前を歩いていた。 「あ、あの人たち桃学(ももがく)の生徒じゃないでしょうか」  レイアは、桃薔薇魔法女学園を『桃学』と略した。  よく見ると全員ブレザーを着ている。ますます、不安になる空子。 「ちょっと聞いてみます」  レイアが早歩きで、前方を歩く集団に向かう。その中の一人に話しかけると全員が振り返って空子を見た。彼女たちも初めて見たようにジロジロと見る。 「な、なんだろうやな感じ」  空子が、ブレザーの一団に追いつくと、彼女たちは何事もなかったように歩き始めた。 「あの子たちも新入生で、セーラー服のことは知らないそうです。やっぱり桃学に行ってみないと分かりませんね」 「そっか、ありがとう、レイアちゃん。でも何なんだろうな、この制服の違い。モヤモヤするう」  大きなアーチ形の格子の門。  普通入り口には、入学式の大きな立て看板があるが、ここには無い。  保護者も来賓もいない入学式。  まるで秘密の儀式をするような雰囲気だ。  門を入ると右手に運動場、左手に校舎がある。  校舎の外観は、3階建ての普通の高校となんら変わるものではなかった。  玄関に長机が置かれ、二人の職員が新入生に応対していた。  受付前では、新入生が長蛇の列をなしている。  空子が最後尾に並ぼうとした時だった。 「おーい! そこの君。セーラー服の生徒さんはこっちでーす」    呼ばれる空子。丸眼鏡のアラサーとみられる小男が、手招きをしている。
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