21人が本棚に入れています
本棚に追加
学校が近づくにつれて、他にも生徒が数人前を歩いていた。
「あ、あの人たち桃学の生徒じゃないでしょうか」
レイアは、桃薔薇魔法女学園を『桃学』と略した。
よく見ると全員ブレザーを着ている。ますます、不安になる空子。
「ちょっと聞いてみます」
レイアが早歩きで、前方を歩く集団に向かう。その中の一人に話しかけると全員が振り返って空子を見た。彼女たちも初めて見たようにジロジロと見る。
「な、なんだろうやな感じ」
空子が、ブレザーの一団に追いつくと、彼女たちは何事もなかったように歩き始めた。
「あの子たちも新入生で、セーラー服のことは知らないそうです。やっぱり桃学に行ってみないと分かりませんね」
「そっか、ありがとう、レイアちゃん。でも何なんだろうな、この制服の違い。モヤモヤするう」
大きなアーチ形の格子の門。
普通入り口には、入学式の大きな立て看板があるが、ここには無い。
保護者も来賓もいない入学式。
まるで秘密の儀式をするような雰囲気だ。
門を入ると右手に運動場、左手に校舎がある。
校舎の外観は、3階建ての普通の高校となんら変わるものではなかった。
玄関に長机が置かれ、二人の職員が新入生に応対していた。
受付前では、新入生が長蛇の列をなしている。
空子が最後尾に並ぼうとした時だった。
「おーい! そこの君。セーラー服の生徒さんはこっちでーす」
呼ばれる空子。丸眼鏡のアラサーとみられる小男が、手招きをしている。
最初のコメントを投稿しよう!