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3時間目は、数学だった。
体の細い長身の男性教員が、幾何学をもとにして、魔法陣の作り方についての授業をした。数学は、自称理系女の静流の独壇場で、あらゆる魔法陣を自在に描きこなした。
4時間目は、魔法史の授業……。
古の魔法使いのコスプレをした、髭の長い老賢人が現れて、ゴニョゴニョと魔法の歴史を語る。静流以外の生徒は、ほぼ意識を失っていた。
昼休み、5人は机を円状にした。
輪になって弁当だ。
「あ、あたしはいつも一人で弁当を食ってたから、こういうのって、何か恥ずかしいな」
と言いながらも、弁当の包みを開く萌だった。
はにかむ萌を見て綺羅愛が、
「萌、かわいい」
と言ったのを空子は聞き逃さなかった。
「では、いただきましょう! 合掌!」
「なんだよ静流。ここでも号令かよ」
静流の真面目さに、ぼやく萌だった。そう言いつつもちゃんと合掌はしている。
「いただきます!」
「いただきまーす!」
「あっ、空子ちゃんの玉子焼き美味しそう!」
綺羅愛が、弁当箱をのぞきこむ。
「ああ、これ? 私のお弁当は、お母さんが作ってくれてるの。綺羅愛ちゃん食べる?」
「え! いいの。じゃあ、いただきます! 美味しいよ! ありがとう」
「そう。よかった。綺羅愛ちゃんのお弁当は、自分で作ったの?」
「うん。いつも自分で作ってるよ。綺羅愛、小さい時に両親が離婚して、ずっとお父さんと暮らしていたから、おふくろの味っていうのに憧れていたの。これがそうなんだ。美味しいよ……」
少し涙ぐむ綺羅愛。本当に嬉しかったようだ。
「綺羅愛たん、あたいのも母ちゃんの弁当なんだ。芋の煮っ転がしあげる」
奈々が、綺羅愛の弁当箱に、丸い芋を入れた。
「ええ! いいの? 奈々ちゃんもありがとう。綺羅愛、感激!」
あまりにも綺羅愛が喜ぶので、萌も、静流もおかずを提供する。
その後は、5人がおかずの取り換えっこをした。
5・6時間目は美術の授業。
ボサボサ頭の黒縁眼鏡をかけ、スモックを着た中年男性が、美術の教師だった。
「んだば、授業すっか!」
挨拶の号令をける静流。
「えー、わしゃあ、美術をば担当する、乱土 軽石庵だべ。よろすくな。今日はよう、おめえさんがたの魔法具を作ってみっぺ」
「乱土先生、魔法具ってなんですか?」
静流は常に積極的だ。
「そのー、なんだ、あれだべ。魔法使いは、杖とか、札とか持ってっぺ。魔法を使うときに持ってるやつだべ。その魔法具を、おめえさんたちが作るんだあよ」
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