21人が本棚に入れています
本棚に追加
「萌ちゃん! 萌ちゃん! 大丈夫? ごめんなさい! ごめんなさい!」
「綺羅愛こそ大丈夫か? サイバー組のやろう、謝っている綺羅愛に、こんな事をするなんて許せねえ。もとはと言えば、お前らが最初に綺羅愛をいじめたんだろ! 綺羅愛は、無我夢中で自分を守っただけだ!」
ぬれた髪の萌が、明日香達をにらむと、全員がスマホを取りだした。臨戦態勢をとるつもりだ。萌も、大きな呼吸をして大地から『マナス』を取り込み始める。
「みんな、ダメだって! 魔法を使った暴力は禁止されてるでしょ! 退学になっちゃうよ!」
手を振って叫ぶ空子だが、一触即発の状況は変わらない。
「ダメだよ、ダメだよ。何とかしないと。静流ちゃん、早く先生を連れてきて……。そうだ! 奈々ちゃん!」
「え? え? なにさ、空子たん!」
「ガラマジ組を守る妖怪を召喚してよ!」
「ええ? 守る妖怪? 何だろ何だろ……」
そう言いつつ口を開けて、急いで人魂『マナス』を食べる奈々。その身体が薄っすらと光り始めた。
「えーい、もう詠唱しちゃうよ。闇の中の妖怪ちゃん。あたいに力をかしとくれ、君に決めた!」
「何を召喚するの?」
「ガラマジ発動! ぬりかべ召喚!」
呪文を唱えると、奈々の背後に闇の渦巻きができる。そこから、縦3メートル四方で小さな足のついた石壁が現れた。よく見ると小さな目もある。
「やったよ! 奈々ちゃん! 召喚成功だ! 萌! 綺羅愛ちゃん! ぬりかべの後ろに来て」
突然現れた大きな壁に驚く明日香たちだった。その隙に、空子と綺羅愛が、萌を支えてぬりかべの後ろに隠れた。
「いててて、覚えてやがれ。あいつらにガラマジを食らわしてやる」
「ごめんね。萌ちゃん。今、治してあげる」
いつの間にか『マナス』を溜めていた綺羅愛が詠唱を始める。
「いたいの、いたいの飛んでイケー! もう大丈夫だよ! ガラマジ発動! なんでも軟膏!」
綺羅愛が回復魔法を発動して、萌の背中をなでる。火の粉で焦げた跡が、フッと消えた。
「綺羅愛、ありがとう。痛みが取れた。直ったよ!」
「よかった。はい、もう大丈夫」
萌の背中の火傷が直ったのも束の間、サイバーマジックの一斉攻撃が始まった。スマホから、ある者は火の粉を、またある者は、水の噴射をしてくる。さらに。小さな石礫も飛んで来た。それを遮る、ぬりかべだが……。
「空子たん、あたいの魔力、もう、もたないよ。限界だあ」
奈々の体内の『マナス』が枯渇しかけている。光っていた奈々の体が点滅し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!