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「あたしが行く!」
立ちあがる萌。
「だから、ダメだって! 魔法を喧嘩に使っちゃ、退学になるよ」
空子は、必死で押しとどめようとする。
「魔法を使わなければ、いいのね」
今度は綺羅愛が、立ちあがった。
「萌ちゃんをこんな目にあわせるなんて、あいつら絶対許せない。綺羅愛がボコボコにしてやるわ」
指の骨を鳴らす綺羅愛。
「もー! 綺羅愛ちゃんもダメー! 奈々ちゃん何とかならないの! 静流ちゃんも、早く帰ってきてー!」
萌と綺羅愛を、体を使って押さえる空子だが、先に限界が来たのは、奈々だった。
「ガス欠だよー。もう一回『マナス』を取り込むまで、ちょっと待って、プレイバック!」
奈々の身体の光が消えると同時に、ぬりかべも消えた。遮るものがなくなり、火の粉やら水噴射やら石礫が容赦なく飛んでくる。
「こうなったら、もうこれしかないよ!」
空子は、叫ぶと詠唱を始める。
「私はいつも奈々ちゃんを応援しています! ガラマジ発動! ファイトー、いっぱーつ!」
聖杯魔法の正式な呪文ではなく、空子の作ったオリジナル呪文だ。
一瞬、静寂になる。何も起こらない……。
と、思いきや突如、空子の身体が金色に輝き出す。魔法が発動した。
その手を奈々に向ける。金色のイナズマが、空子の掌から発して奈々の全身を包む。
「わああああ! 何か力がみなぎってきたよ! 『マナス』充填120%だあああ!」
奈々の身体が一気に緑色に輝いた。眼鏡まで怪しく光る。
「さあ、さあ、召喚しちゃうよ! 闇の中の妖怪ちゃん。あたいに力をかしとくれ、君に決めた!」
気迫に押されて、全員が奈々に注目した。
「ガラマジ発動! がしゃどくろーー召喚!!」
再び奈々の背後に、霧のような、漆黒の渦巻きが現れる。奈々の周りを包むほどの大きさの闇が見る見るうちに大きくなる。その闇は、空子たちも明日香たちも見上げるほどの巨大なものになった。
「お、おい! 奈々! これってヤバいんじゃないか!」
萌がビビるほど闇は広がる。
暗闇の渦から音が聞こえた。大木が、こすれたりぶつかったりするような大きな音。
ギシシ、ギシギシ、ガガキ、ガキ、カタカタカタカカカカ。
ついに闇が形を成し始めた。黒い霧は白くなり、頭がい骨となった。背骨もある。鎖骨もある。肋骨もある。
20メートルはあろうか、ガイコツの巨人が現れた。
「いっけえ! がしゃどくろ!」
奈々が、緑色に輝く両腕を明日香たちに向けた。
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