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巨大なガイコツが、ゆらゆらと明日香たちに近寄って行く。
その巨大なドクロで、頭突きをされたり、手で薙ぎ払われたりしたら、大ケガをしそうだ。
サイバー組の生徒は、散り散りにその場を離れる。
明日香は、唖然として立ち尽くしていた。乙女が、明日香に叫ぶ。
「明日香! ヤバいよ! 逃げるよ」
乙女が、手を引くが、腰に力が入らないのか、動けない明日香。
がしゃどくろが、骨の手を上げた。このままだと、明日香たちは叩き潰される。
その時、鋭い声がした。
「空子さん! 『マナス』の供給を止めなさい! 魔法をキャンセルしなさい!」
マスターの声だ。ハッと我に返る空子。
「魔法を解除します! お疲れ様でしたー!」
空子の輝きが消える。奈々への『マナス』の供給が止まった。
「奈々ちゃんも、魔法を解除して!」
叫ぶ空子。
「わ、分かったよ。 よくやった! 戻れ、がしゃどくろ!」
解除の呪文を唱える奈々。体から発していた緑色の光が細かい粒となって霧散した。がしゃどくろが、透き通っていく。やがて、フッと消えてしまった。
「みんな、大丈夫? 遅くなってごめんなさい」
半泣きの静流が、ガラマジ組4人に頭を下げる。
「いいや、静流ちゃんありがとう。危機一髪だったけど、これ以上の大ごとにならなくて、よかったよ。先生が止めてくれなかったら、妖怪が暴走してた」
空子はそう言って、明日香と乙女を見た。
明日香は、涙を流してガタガタと震えている。よほど恐ろしかったのだろう。乙女が、背中を抱きしめていた。
レイアと神楽耶もサイバー組の2人を心配する。
「大丈夫でしたか? 怪我はないですか?」
声をかけるレイア。
「他の者は、逃げてもうた、みたいどすなぁ。おそらく大丈夫やろ」
周りを見ながら、神楽耶がため息をつく。
レイアと神楽耶の背後から声がした。
「田野明日香も網棚乙女も、今から生徒指導室だ。デバイスは預かるから、出しな。とんでもない事をしてくれたね」
野太い声の小柄な、中年女性が現れ、明日香と乙女からスマホを受け取った。さらに、レイアと神楽耶に向かって支持をする。
「逃げた奴らに『生徒指導室に来るように』と、言っといてくれないかい」
「はい……。先生」
レイアと神楽耶が、教室棟に向かう。
「増田先生、こっちはあたしが、事情を聞くから。その子たちはまかせたよ。その後でこれからの事を話し合おう」
「分かりました。彼方先生」
マスターが、ガラマジ組の5人に、女性教諭を紹介する。
「この方は、現代魔法科1年3組の担任で、彼方 松 先生だ」
それぞれ、頭を下げるガラマジ組。
彼方松教諭は、一人一人の顔をまじまじと見た。空子は、古の魔女から見られているような威圧を感じる。
「さて、お二人さん行くよ。あんたたちが、古典魔法科にかなうと思ってんのかね……」
明日香と乙女を伴って、彼方 松 教諭は校舎に帰った。
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