Ⅵ 謹慎の空子

1/9
前へ
/81ページ
次へ

Ⅵ 謹慎の空子

 教室に戻ったガラマジ組の5人とマスター。  それぞれ自分の席に着く。 「大丈夫ですか。ケガはないかな」  マスターは、(もえ)綺羅愛(きらら)を見て聞く。 「マスター! 大変だったんですよ! 萌は、背中に『火の粉』を受けました。綺羅愛ちゃんが、治してくれたんで良かったけど」  空子(くうこ)は、冷静過ぎるマスターに、憤慨(ふんがい)している。 「空子、大丈夫だよ。あいつらの魔法なんて、大したことなかったぜ。綺羅愛も回復魔法してくれて、ありがとうな」  萌は、綺羅愛にほほ笑んだ。 「萌ちゃん、ごめんね。綺羅愛のせいで。あのサイバー組の人たち、中学の不良グループで、綺羅愛をいじめに来たことがあったの。怖くて、怖くて、確かにボコボコにしちゃったことがあった。思い出したよ。綺羅愛が悪いんだ」  手で顔を覆う綺羅愛。 「綺羅愛ちゃんは、悪くないよ! 悪いのは、サイバー組のやつらだよ。禁止されているのに、魔法を使って、(あやま)っている綺羅愛ちゃんの事を、傷つけようとしたんだ。こっちは、自分たちを守っただけだよ。マスター! 私たち何も悪くないよ!」  空子が、立ちあがって、弁明の声を上げる。  マスターは、空子を見る。 「分かっていますよ。職員室から、ずっと見ていましたから」 「え? どういうことですか? 見てたのなら、すぐに来られたんじゃないですか?」  空子の問いに、静流(しずる)が答える。 「(わたくし)はすぐに職員室にマスターを呼びに行ったんです。そうしたら、マスターはみんなが写っている、『魔法の鏡』を見ていました。何度も、みんなの所へ行くように、催促(さいそく)したのですけれど」 「はい。君たちの様子は、『魔法の鏡』からずっと見ていました」  眼鏡を指で上げながら、静かに言うマスター。 「そうなら、もっと早く、来てほしかったです!」  (こぶし)を握りしめる空子。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加