21人が本棚に入れています
本棚に追加
「すみません。そうすべきでした……」
「マスターは、私たちが魔法を使うのを、見たかっただけ、じゃないんですか? 私たちを試したんだ」
空子の声が、大きくなってくる。
「その通りです。綺羅愛さんの回復魔法も、奈々さんの召喚魔法も、レベルが上がってきている。そして、空子さん、君の補助魔法……」
空子を見るマスター。
「うん。あれは、凄かったよ。空子たん! 一瞬にして元気100倍だったよ。あたいも自分で止められないぐらいだった」
奈々は、椅子から腰を浮かして、興奮気味で空子を見る。
「そうです。奈々さんが召喚した、『がしゃどくろ』は、魔力値80で召喚できる妖怪です。今の奈々さんの能力では、とても召喚できるものではありません。それだけの『マナス』を空子さんは、奈々さんに供給した。あれが、空子さんの力の一端なのです。あのまま、暴走したら一番危なかったのは、空子さんだった。だからあの時点で、君を真っ先に止めたのです」
「え、一番危なかったのは私?」
「そう、あの魔法の発動が、空子さんのオリジナルの呪文でよかった。もし正式な呪文だったら……おっと、余計なことを言うところだった」
言葉を濁すマスターだった。これは、マスターと空子の秘密なのだ。
「それで、私たちどうなるのでしょう。魔法を使って騒動を起こしてしまったから退学ですか? 奈々さんの『がしゃどくろ』召喚は、私がお願いしたものです。悪いのは私です」
空子が、席に座り直す。
「まあ、そうとも言えますね」
「マスターそれは、あまりにも理不尽です! 私は、すぐに現場にきて下さるようにお願いしたのに、動かなかったじゃないですか。職務怠慢です! 退学なんて、あんまりです!」
珍しく静流が、感情的になってマスターを糾弾した。
「そうだよ。マスターがすぐにきてくれれば、萌ちゃんも、『火の粉』と『バケツの水』を浴びずにすんだよ!」
「綺羅愛、それはもういいよ。あいつらの魔法なんて、大したことなかったから」
しばらく沈黙が続いた。
マスターが、おもむろに口を開く。
「今日の午後の授業は、中止にします。君たちは、速やかに下校して、家で待機しておいてください。追って沙汰を連絡します」
「やっぱり、退学ですか……」
俯く空子。お母さんになんて言おう……。考えると涙が出てきた。
その日、ガラマジ組と、騒ぎを起こしたサイバー組の生徒は、家で待機となった。
最初のコメントを投稿しよう!