Ⅵ 謹慎の空子

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「すみません。そうすべきでした……」 「マスターは、私たちが魔法を使うのを、見たかっただけ、じゃないんですか? 私たちを(ため)したんだ」  空子(くうこ)の声が、大きくなってくる。 「その通りです。綺羅愛(きらら)さんの回復魔法も、奈々(なな)さんの召喚魔法も、レベルが上がってきている。そして、空子さん、君の補助魔法……」  空子を見るマスター。 「うん。あれは、凄かったよ。空子たん! 一瞬にして元気100倍だったよ。あたいも自分で止められないぐらいだった」  奈々は、椅子から腰を浮かして、興奮気味で空子を見る。 「そうです。奈々さんが召喚した、『がしゃどくろ』は、魔力値80で召喚できる妖怪です。今の奈々さんの能力では、とても召喚できるものではありません。それだけの『マナス』を空子さんは、奈々さんに供給した。あれが、空子さんの力の一端(いったん)なのです。あのまま、暴走したら一番危なかったのは、空子さんだった。だからあの時点で、君を真っ先に止めたのです」 「え、一番危なかったのは私?」   「そう、あの魔法の発動が、空子さんのオリジナルの呪文でよかった。もし正式な呪文だったら……おっと、余計なことを言うところだった」  言葉を(にご)すマスターだった。これは、マスターと空子の秘密なのだ。 「それで、私たちどうなるのでしょう。魔法を使って騒動を起こしてしまったから退学ですか? 奈々さんの『がしゃどくろ』召喚は、私がお願いしたものです。悪いのは私です」  空子が、席に座り直す。 「まあ、そうとも言えますね」 「マスターそれは、あまりにも理不尽(りふじん)です! (わたくし)は、すぐに現場にきて下さるようにお願いしたのに、動かなかったじゃないですか。職務怠慢です! 退学なんて、あんまりです!」  珍しく静流(しずる)が、感情的になってマスターを糾弾(きゅうだん)した。 「そうだよ。マスターがすぐにきてくれれば、(もえ)ちゃんも、『火の粉』と『バケツの水』を浴びずにすんだよ!」 「綺羅愛、それはもういいよ。あいつらの魔法なんて、大したことなかったから」  しばらく沈黙が続いた。  マスターが、おもむろに口を開く。 「今日の午後の授業は、中止にします。君たちは、(すみ)やかに下校して、家で待機しておいてください。追って沙汰(さた)を連絡します」 「やっぱり、退学ですか……」  俯く空子。お母さんになんて言おう……。考えると涙が出てきた。  その日、ガラマジ組と、騒ぎを起こしたサイバー組の生徒は、家で待機となった。
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