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生徒が帰った後、生徒指導に関する聞き取りが行われた。
円卓の特別会議室。出席者は、1年3組サイバー組担任、彼方 松教諭、1年8組ガラマジ組担任、マスター。さらに半田 荘 生徒指導主事の3人。
「増田先生、うちの生徒が、迷惑をかけてすまなかったね。サイバーマジックは手軽にできるから、いい気になってたんだよ。おバカな子たちだ」
彼方教諭は、騒ぎを起こした全員に、今まで説教をしていたのか、少し疲れている。
「いえ、こちらもまさか、あそこまで暴走するとは、思いませんでした。対応が遅れてすみません。あの2人は大丈夫ですか?」
マスターは、指を組んで言った。
「ああ、明日香と乙女かい。相当ショックだったみたいだね。古典魔法科を甘く見ていたからね。自分たちの魔法が、強いと思ったんだろう。ところが返り討ちにあったもんだから。自信喪失だね。もう、喧嘩は吹っ掛けないと思うよ」
そう言って、彼方教諭は、椅子の背もたれに片腕をかけて、生徒指導主事を見た。
スーツを着た中年の生徒指導主事は、2人を見る。
「事の顛末は、わかりました。生徒指導規定にそのまま照らし合わせると、田野 明日香は、魔法で安田 萌を傷つけているので退学。網棚 乙女も同じく退学。その他のサイバー組の生徒は、無期停学ですね。対する1年8組で生徒指導の処分対象となるのは、蛇ノ目 奈々と城将 空子です。蛇ノ目奈々は、未遂ですが、召喚した妖怪で、田野と網棚を傷つけようとした。これは、危険行為で無期停学相当ですね。そして、判断が難しいが、そのきっかけを作ったのが城将空子です、彼女が蛇ノ目に『マナス』を供給しなければ、こういう事にはならなかった……。そう考えると危険行為補助で、無期停学ですな」
規定文書を見ながら、生徒指導主事は事務的な口調だ。
「ただ、事がこうなると分かっていながら、放置していた教員側の怠慢もあります」
マスターをにらむ生徒指導主事。
「増田先生、あなたは1年8組の深山 綺羅愛が、体育館の裏に行くところから、魔法の鏡で見ていたそうじゃないですか。その時点で、介入しなかったのは、あなたの怠慢ですよ」
「半田先生、ちょいと待ってくれ。実はね、増田先生は、すぐに行こうとしたんだよ。それを止めたのは、あたしだ」
彼方教諭が、口を挟んだ。
「え、では彼方先生も、彼女たちの様子を見ていたと……」
「ああ、うちの明日香も乙女も、ちょっとサイバーマジックを覚えただけで、最近調子にのって来てね。力を見せつけたかったのさ。あの2人が、8組の綺羅愛を狙っていたのは、朝から気づいていたよ。だから、うちのクラスのレイアと神楽耶には、それとなく、明日香たちの様子を見ておくように、言っておいた。で、案の定、昼休みに明日香が動いたってわけだ。マジで喧嘩をすれば、古典魔法が強いのは分かっている。サイバー組の子たちには、それに気づいてほしかったんだけどね。まあ、そんな様子を魔法の鏡で見ていたんだ。まさか、あそこまで強力な魔法が、いきなり発動するとは、あたしもびっくりしたよ。急いで、増田先生と現場に急行したってわけだ」
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