10人が本棚に入れています
本棚に追加
ある日、母親が寝坊したので、今日の昼食はいつもの重箱の大盛り弁当ではなく、購買のパンになった。
予算は500円。通常のこの年齢の子ならばいくらか余るだろうが、ジョアンナのことだ、500円では足りないかもしれないけど、さすがにパンばかり1000円分は多い気がする。
母は仕方なく500円を持たせることにした。
そしてお昼の時間がやってきた。食べ盛りの生徒が群がるパン売り場は、さながら戦場のようだ。
次々と売られてゆく人気のパンたち。
激しい競争の中カロリーなんて計算してる余裕はない。
予算ギリギリまで使って必死に手に入れたパンだったが、やっぱり足りないかもしれない。もう何度もお腹が鳴りっぱなしだった。
「今日はここで食べるとしよう」と、人通りの少ない体育館横の花壇にベンチがあったので腰かけた。教室まで我慢できなかった。
早速、袋から出してパンにかじりつく。だが、あわてて食べたためあんパンの餡がニュルっと出て下に落ちた。
地面に落ちた餡。見なくても分かる、砂が付いたと思うので3秒カウントするまでもなくあきらめてアリにやることにした。
買ったパンをすべて平らげた頃には、もうアリたちがパンを見つけて大はしゃぎしていた。
不可抗力でアリのエサになった餡だが、こうして見るとアリ達もなかなかカワイイものだ。あっちこっちで必死に働き、せっせとエサを運ぶ姿を眺めていると、ふいに後ろから声がした。
「おい小僧、じゃまだ、どけ」
最初のコメントを投稿しよう!